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help リーダーに追加 RSS 藤原新也 「東京漂流」

<<   作成日時 : 2008/03/31 23:54   >>

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___「東京漂流」 1981.10発行 F誌での1年の連作をまとめたもの。___
[この仕事は私が日本というものに目を向け始めてから、その国との初めての正面からの対峙であり、又、13年間に亘るアジアの旅を、自分の国に返す必然的な作業]
[基本は私自身がこの都市を漂流しながら、その日常の中の私なりの感応方法によって、何かを掴み取り、そして書く、ということが主軸]

///この著書に書かれている事柄には、幾つかの事件が挙げられており、どんな時代の流れでその事件が生まれる土台が出来てしまったのか、を角度を変えて示してくれているように思う。///
_____________________________________________________________________________________________________________________________
__<金属バット撲殺事件>__
 1980.11.29 川崎市高津区宮前平---一柳展也、19歳---金属バットで両親を殴り殺す
父は昭和9年生、高度成長から現在まで「企業」「家」「神器」に捧げて来た。
自己性を見失った父親像、自閉的な家の構造と街の環境、生産と拡大の論理の下に敷かれた偏差値教育と受験地獄による抑圧的な教育下の子供。

家を手に入れるまで、家族が一丸となって意思の疎通と情熱、お互いの痛み喜びを共有していた。しかしその祭りの後虚脱。

事件の起きた土地の開発は↓
・1960(S35)__政府の都市開発構想の下、東急建設(五島慶太)、この付近一帯の農地を買収。(S28)買収当時、坪\517 戸数56戸、人口328人の村だった。
・1968(S43)__分譲開始時 1000倍の人口に
・1978(S53)__3000倍の人口に。
事件の何年か後行った[すみれが丘] 次々と新しい物が建っていた。方向感覚が無くなった気がした。

__<アップルパイ家族の家訓>__
'81年夏 「成熟社会における生活の質と消費行動」リポート
調査の対象---杉並区の典型的な中流住宅の主婦「どんな物を身の回りに持つことによって、幸福感や満足感を得られるか?」
__フランスパン、ブランデー、レギュラーコーヒー、百科事典、応接セット。

遡って'50〜60---三種の神器_冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビ。
'60〜70---三種の神器_(3Cと呼ばれる)カラーテレビ、カー、クーラー。となっている。

 ___藤原氏は新興住宅地が並び立つまでの住宅の推移を辿っている___
・日本の団地第一号、1956年 産業革命の高度成長期 「技術革新」を唱え始めた。
この200年前 英の産業革命に遡ると、近代合理主義「能率、生産、拡大」の思想を実現させる為の家の構造が計られた。
アイデアは当時の「牢獄」の建築システムから採用__人間管理

・「家」は、「手」によって造られる人間の体温を宿したものから、システム量産型の「冷たい」機能へと変革。以前の日本家屋構造は機能的ではなかったが、世間に向かって解放されており、自然環境の中で呼吸している「生き物」であった。
__床の間(坪庭)--自然との交信、神棚・仏壇--人の欲・煩悩を抑制
解放から閉鎖へ

__<長い喜劇>__
住宅が次々と立ち並ぶこの時代は、又、あらゆる商品の需要と供給がせめぎあってグラフを登っていった。それを物語るマニュアルの一文がこちら↓

・経済学者_林 周二「大衆の浪費を刺激する100の戦略」(元の分類は 米_社会学者、V.パッカード)
1.捨てさせる---100円ライター、1000円の時計
2.無駄遣いさせる---大きめの角砂糖、エアゾール式容器
3.贈り物にさせる---バレンタイン、父の日、セール
4.蓄えさせる---洋酒瓶、全集本
5.抱き合わせ商品にする---カメラの速写ケース等
6.きっかけを与える---読書週間、虫歯予防デー
7.単脳化させる---専用ビタミン剤
8.セカンドとして持たせる---セカンドハウス、セカンドカー
9.予備を持たせる---タイヤ、電球(スペア)、フィルム(ストック)
10.旧式にさせる---まだ使えても旧式と思わせる

・その高度成長以降20年を経て80年代
国内需要の停滞、飽食、欲望の飽和点。好奇心をそそられない。気力を失くし眠くなる。

日本人が米のように働く気力を失わなかったのは(70年代)手に入れた「神器」を安置する「御堂」が十分手に入らなかった。(家)

戦争や区画整備による「日本の家」の崩壊。高度歳長期における人口の都市流入
・姓---他人の家の下宿人
 荘---曙荘などという民間アパートの住人
 号---公団、マンション
 字---字と着く村に一戸建て

この時代・1億円拾得、野村克也、王 貞治引退、
山口桃恵結婚---自分の出生時_屋賃\4000から21年後1億5000万円スイートホームの暮らし。

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__<コレラ>__
10年前 バングラデシュ--印パ戦争、膨大な数の難民(最終的に700万人)
難民の中にも豊かな者、貧しき者の差がある。

・夫を亡くした女、子供に食べさせるため20円で同じ難民に身を売る。見知らぬ男と女が水草の陰のほうに10歩ほど離れて歩いていく、おぞましい光景を何度か目撃した。人々はそれを無気力な目で眺めていた。

餓死者が続出。屍が集められて焼き払われ、焼け残ったものはカラスや犬の餌食となった。熱と湿気は疫病を蔓延らせた。瘴気が人々を襲った。疫病の巣窟となった水溜りや小さな沼の水を人々は飲まざるを得なかった。

その状況で人工呼吸を試みる見る者が。助かる見込みのない子、彼女自身も死の危険があるのに。子供の死の状態から、迷いと孤独と苦痛を剥ぎ取り、その死に意味を与えようとしていた。子供の死を背負うが、子供によって救われようともしていた。

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・かつて良心や人間性をかなぐり捨て、さんざん「物」の虜になった挙句、それに満たされると今度は「精神」をも欲しがり始めた。今日の精神主義は人間としての覚醒によってもたらされたものではなく、新たなる食欲。

'80年台「精神的なる食欲」「ネズミ講式ブンカ」が蔓延る。企業はブンカをも物を売るための手段とし始めた。

★あのバングラデシュの女性のように他者を救い、自己の救済を行なったのとは違い、募金やボランティアなど「善」を「美意識」としか持たない。自己の救済という覚醒意識を持たぬまま他者への救済へと向かう。傲慢で短絡的な方法は、確証のない「善意識」をより明確にする為に「悪」の概念の短絡的創出に向かう。

__覚醒のない「善」の観念は 覚醒のない「悪」の観念を生む。
__「善」も「悪」も人々の自己救済のための「生贄」に過ぎない。

・'81年 東京藝術大学音楽部教授、海野義雄の’偽名器ヴァイオリン事件’
 '82年 三越 ’偽ペルシア秘法事件’に関する岡田茂、竹久みちへの糾弾。
マスコミが小物捕獲をトップで報じたのは、1億総ブンカ至上主義の時代に「偽ブンカ」で人の目を欺こうとしたから。

このような'80年代は、所得倍増、生産と消費と拡大、家族の連帯行動。 生活意識はコントロールされていた。
そして家の完成---家訓は座標軸とされ、形だけの絶対善・絶対悪の心得。フランスパン、ブランデー、コーヒーの「幸せの象徴」を求めた孤立と対話のない偽りの家庭。

〜〜〜ここでひとまず前半終了〜〜〜


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