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zoom RSS 藤原 新也  「ディングルの入江」

<<   作成日時 : 2008/09/01 23:49   >>

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東京の道端で出会ったアイルランドの青年「ケイン」と彼が愛していた彼女「プーカ」。
彼らが住む国の歴史。語り継がれているアマギン民話と彼女プーカの生い立ち。
出会い、繋がりについて共鳴できる言葉が沢山ある。藤原氏の数少ない旅小説。
各章を順ごとにかいつまんでみたが、流れは読んだ人が感じるものであるからここに載せたものはなんとなく目を通せばいいと思う。  後はどこまで入り込めるか。


第一章
アイルランド人 ケイン・マックール
ブルースハープを道端で吹いていた。作者の下宿で9日過ごす。それを貰う。作者ルイス・ボンファ(ブラジルのギタリスト)「黒のオルフェ」を吹いてみる。ケインが奏でていたのはオリジナルの「白い帆影の歌」彼は国を離れる前、ダブリンの外れの叔父が営む「クラン」と言う小さなホテルのバーでシェーカーを振っていて「白い帆影」と言うカクテルを持っていた。

その後1977年 アフリカに撮影の仕事があり、ロンドンに立ち寄る事になっていた。英西部、ホーリーヘッドという港町からダブリンへ。ケインを訪ねてみる。冬季のアイルランドの暴風は名物。

あの時ケインが身につけていた時計にあったプーカの写真、彼女の冷たい眼
---仕事先で氷河を見た時案内人は言った。
「そこには地球の遠いかこの記憶が凍てついたまま閉じ込められている。それはゆっくりと見えるくらいの速さで今に向かって動いている。
やがてその先端は大きな音と共に崩れ落ち、時にその断面から、よく保存された雪ヒョウや古代ヤギなどの標本が発見されることもある。
氷河というものは人の眼に一見冷たく閉ざされたもののように見えるが、その中には神秘に満ちた暖かい過去の時間が流れている。」

第二章
アイリッシュ海 4人の航海
ダブリンに着いて気持ちが変化していった。この旅行を3,4泊程度の小旅行と考えていたが、別の世界へ投げ込まれてしまったかのようにケインに会う。
クランでバーテンをしていた。

第三章
ダブリン発西部のトラリーに列車で向かう。断崖を見たくなった。海中時計の中のプーカの写真に写っていた断崖。

___1649年 英ピューリタン革命家 クロムウェル カトリック征伐の名目でアイルランドに侵略。市民を大量に虐殺。不毛の西部に追い詰める。
ここで大量の死体を前に一編の詩
  「埋める土もない。流す水もない。吊るす木も無い。」____
プーカらしき人に会う。

第四章
カフェで本を読みながら目にした1枚の写真。1948年 ケリー州ブラスケット島の家族。
 米から多くのアイリッシュの子孫達が、旅行がてらに彼らのルーツを求めてこの地にやってくる。アイルランド側でも国全域の様々な場所に「ファミリー・ツリー」というオフィスを構え、彼らのルーツ探しを支援。

___200年燃え続けている暖炉がそのパブにある。
暖炉は彼らにとって家族の守護神に近い存在。家や家族の絆の中心を成す物であり、その火の燃える火が何代もの祖先を冬の寒さから庇護して来たと言う歴史的事実。
また、家族にまつわる様々な物語はこの火の前で営々と語り継がれてきた。
 暖炉はその家の全てを知っている。他のいかなる家族の調度品や造物よりもその家の存在を証明するもの。古ければ古いほど誉れ高いもの。___

パブで目にした絵、多くの動物と共に人が暮らす様子が描かれた絵。
このパブで働いていたマイコーという名のサイン。〜ニューハンプシャーより愛と憎しみを込めて〜
 絵も描く。家財の壊れたものも何でも直す。60半ばに米に移民。この絵のような生活を送っていた人が、何もかもモダンな暮らしには順応できなかった。(一人息子がハンプシャー州に渡っており、奥さんは亡くなっていたから。)

そのパブのママにその絵のマイコーが住んでいた島を聞くと「ブラスケット」
そこでスケッチをしてた人がプーカだとも教えられた。
「あの島からやってきた人は、プーカみたいに人付き合いを嫌うか、逆にマイコーのように人一倍人の温かみを求めてくるか。二種類に分かれるみたい。」

第五章
イーグル山の麓プーカを訪ねるのにブラスケット島のことをもっと知りたくなった。ここ2週間のうちにブラスケット島に3度出逢った。
人が無意識の中で見ようとしているある対象が、度重ねてその人の前に現れてくるという日常のちょっとした神秘。つまりはシンクロニシティーはしばしば人々の前で起こっている。

彼女が書いた絵を見せられた。洒落たレストラン向き。
「自分の気持ちを隠すために喋る人もいれば、自分の本当の気持ちを伝える為に喋る人もいる。
この絵は自分の気持ちを隠す為に喋っている絵だと思うな。

すると彼女はゲームのように22枚の島の絵を出してきた。どれを選ぶ?微妙に異なった絵の中で自分の心に最も近い絵はどれか?
この時ふと思い出したケルト民話___森の猟師の話だ。

___北アイルランドに「ホリン」という名の猟師。1ヶ月獲物に恵まれていなかったが、その日の夕方10年来見かけたことのないような大鹿。木陰に身を隠し銃口を鹿に向ける。すると鹿の顔が男を作って逃げた恋人の顔に。ホリンは引き金を引くべきか迷う。昔の三角関係のいざこざが蘇り頭が熱くなった。
「この野郎!」その時異変が。鹿は突然二頭に分離した。どちらが本物でどちらが幻か。そして銃口をそれぞれに向けた。彼はどちらの鹿の眼が銃を恐れるかを試した。彼は恐れの光を放った眼の鹿に狙いを定め発砲。すると鹿はまた分身した。鹿はついに数十頭の群れとなりホリンを取り巻く。
 今日は猟をやめるべきか。しかし機会を逃したら俺は奴らに一生復讐できない。ホリンはその鹿の中の本物だと思える一頭に狙いを定めて発砲する。その時突然森を揺るがすような大きな音。一本の木がホリン目掛けて倒れてきた。そして鋭く折れた枝がホリンの心臓を貫く。猟師は木を撃ったのだ。それを見届けた一頭の雄鹿が盛り深く消え去る。___

1枚の絵が私の目を捉えた。その絵がこちらをじっと見つめているように思える....私を見て と。
「どうも君は、あの吹きすさぶ冬のような激情的なものや深刻なものを、無意識の中で価値のあるものと見なしているのじゃないか。だが季節は皆同じだ。時にはブラマンクのような真冬の厳しい風景を描くより、ボナールのような春の柔和なものを描いて人の心を捉える事の方が、案外難しいことかもしれないと思うことすらある。
 それは君にだけ与えられた課題じゃない。写真家としての僕自身の問題。


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