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zoom RSS 多田富雄 「ビルマ鳥の木」 〜後半〜

<<   作成日時 : 2009/02/02 23:27   >>

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__<都市と生命>__
人体はニューヨークシティのようだ。絶え間なく新しいものが建設。同時に激しい破壊も進行。
無数の人間、多様な営み、巨大な企業、激しい競争、容赦ない収奪、恐るべき犯罪、心温まる愛のドラマ。

ニューヨークシティは常に崩壊の危機を孕みながら活動し発展する。青写真で決められたような整然とした都市計画があるわけではなく、全て何がしの矛盾を含みながらかろうじてやってゆける。
森の様な調和がない代わりに常に強烈な刺激によって欠落したものを再生してゆく。

・「スーパーシステム」とは自分で自分を作り出し、条件に応じて自分の運命を変えながら働いてゆくシステムを言う。
プログラムの一部は遺伝子によって決定されているが別に全ての運命についての完璧なブループリントがあったわけではない。生命とは受精卵という単一なものから複雑な個体というものを作り出し運営してゆくシステム。

・「廃墟」の定義
ただあったものが滅んだ残骸ではなく、ギリシャやローマ、ガンダーラ、シルクロードの仏跡、エジプト、ペルシャの遺跡などの古代文明が見事に花開き、それが回復しようもなく失われ、最小限の遺跡のみが絶対に修正不可能な形で残っているから、それはまさしく絶対であり、限界であり、孤高であり、全てがそこに凝縮。そして時間という逆

戻りの出来ない過程の行き着く成れの果て。

・人間の死の三兆候---心拍の停止、呼吸の停止、反射消失__をもって言う。

☆肉親の死に立ち会ったことの無い子供。死を「感知」(perceive)したことのない大人が増えている。
彼らにとっては’死は存在しない’も同然である。それが社会の大勢となった時、死は「認知」(conceive)はされるが「感知」されることのないものとなってしまう。それが文化的にどういう意味を持つか、考える必要がある。
「感知」されることが無くなった時、死はもう日常には存在しなくなる。

__<能 観世流 橋岡久馬 「高野物狂」>__
結核で片肺を取っている。新作能は大嫌い、と言っていたが、著者が書いた脳死と心臓移植の問題を扱った「無明の井」を引き受けた。鬼気迫る演技。

・「入舞」---舞楽などで一旦舞が終って舞手が退場する前に、もう1度舞台に戻って名残を惜しむかのようにひと舞い舞って舞い収める事を言うのだそうだ。
世阿弥の言う「入舞」は老境に入った能の名手が、もう人生の最後という頃、壮年の役者には及びも付かない芸境の能を演じて監修を感動させるような事を指している。

昔これで名声を博した。と時代遅れのやり方に固執していたのではマンネリズムに陥る。過去の栄光にしがみついて何の発見も無ければ進歩も止まる。こういう「功」(年功。長い経験の蓄積によって達せられる境地)を「住功」といって嫌うなり、そんな事では「老いの入舞」などはおぼつかない「能能よくよく用心之事」と念を押す。
「老いの入舞」というのは経験を積んで老年に入った役者が、その蓄積した修練と知識をもとにして常により高い芸境を達成し続けることを言う。
絶え間なく積んできた研鑽の上で更に新しい花を咲かせる。それも老後でなければ咲かせることの出来ない花を。

住功を避けるにはどうすべきか。
『花鏡』最後の章「奥の段」でのアドバイス(有名な--初心忘るべからず の項)

寿命には限りがあるが、芸能には果てしが無い。もう体も利かずやらない方がましということもあるだろう。しかしそうなってからこそ出来る重大な事だってある。それを発見するのが「老後の初心」その初心を忘れることなく生きていればヨリ輝きのある「入舞」を舞い納める事ができるだろう。
600年前 62歳の世阿弥

☆室町初期に寺社の神事から発展した原始的な能は、先ず能役者の体にカミを宿らせ、それを観衆に顕現させることで民衆のカミに会いたいという願いを達した。時には鬼神の姿、時には精霊の姿で超自然の神秘や恐怖を、聖なるものの恵と救いを人々に思い知らせた。

第2のカテゴリーの「あのひとたち」は幽霊である。物語や伝説で聞いた美女。戦いに散った平家の公達。地獄に堕ちた男女などあの橋を渡ってこの世に現れる霊たちは、自分の生前の姿を見せ、その事を物語り救いを求めてあの世へ去る。
観客はそこに会った事のない祖先の霊や不幸な出来事で死んだ身近な人々などを投影させてみる。それによって「あのひとたち」のかつての出来事を追体験し、救いと奇跡を求める祈りに参加。

第3のカテゴリーは今現実に生きている「あのひとたち」我々と同じ時代に生きているが不思議な体験を持った人たち。

名曲「杜若かきつばた」
伊勢物語のかきつばたを詠み込んだ古歌。
「からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ」

「あのひと」は時の流れの彼方から現れ、自然のめぐりのような美しい舞を舞って、今また時の流れの彼方に去ってしまった。しかし私達が心の中に「あのひと」の姿は永遠に生き舞い続けるであろう。
明らかなのは「あのひとたち」が決して日常性の中に没していない。「あのひとたち」は舞台の上で人間の生き死にの凄まじさ、愛や憎悪、戦いの悲惨さ、さらにはそれらを

超越した境地や隠された聖性など、極限の人間性を伝える為に現れる。だから「あのひとたち」は面(おきて)という特別な顔をつけている。日常の人間の表情を越えて、様々な普遍的なものを語りかける、面という極限の顔を持たなければならないのだ。

面が表現する感情は観客自身が感知する己の心の動き。

能は「月のかかった空を見上げる」とか、たった一つの仕草を見せるために一曲があるのではないかと疑われるほど、ディティールの一部が極端に拡大して映し出すための空

白部分を作り出す手段。

__多田富雄/1934年茨城 結城生まれ '94東大医学部名誉教授。現在('95)東京理科大生命科学研究所所長。'95 国際免疫学会連合会長。__

////能はまともに見たことが残念ながら無い。しかし、一切の余分な動きを削ぎ落とした一挙手一投足が一つの情景、心持を伝え、受け取る側は、余白を持った問いかけに自ら展開を無意識に作り出してストーリーを作り出してゆくのではないかと感じる。そこにはそれまでの各々の経験と体験。そして希望が知らぬ間に組み込まれている事だろう。
余白
といえば、日本画や生け花がそうだが、日本人は1枚の襖絵、1つの水盤にも空白を残す。フラワーアレンジメントのように何所から見ても同じ様に、ぎゅうぎゅうに詰め込まれたものに自分は惹かれない。まあ、それだけの事だが。脱線してしまったので戻るが、

「老後の初心」老いてからだが不自由になってから出来る事があるとして、初心を忘れずにより輝きのある入舞を舞うには想像以上の精神が必要と思う。この歳でさえ’慣れ’の日常にどっぷり浸かっているのだから。
能にかけたわけではないが「脳」は事故に遭い、損傷を受けた脳の使えなくなった部分を他の働きの脳が補う。とか、老いて記憶が弱くなった部分を、これまでの経験から判断する能力が長けてきて補う。と聞いたことがある。

↓関連記事 見つけたのでここに追記
・直感---脳の「線条体」が関与して「理由が分らないが感じること」___年をとるほど正しく感じる→手続き記憶、無意識で自動的、かつ、正確な繰り返しの訓練によって身につく。
 ひらめき---「大脳皮質」が関与して「理由が分って感じること」___'09/2/3

’「スーパーシステム」とは自分で自分を作り出し、条件に応じて自分の運命を変えながら働いてゆくシステム’
ある程度プログラムされたものを持った遺伝子は’遺跡’としてかろうじて残った神殿の柱の様でもあり、そこから’感情’’意志’を持った人間がニューヨークの街の様に絶えず様々な人種、新しい考えを受け入れ、世界へ向けて発信する。ニューヨークとまではいかなくとも、あらゆる街の日常のドラマのように何かが動いている。
スーパーシステムは体を持つ者の心持でいかようにも対応してくれるのだろうか。だとすれば’老後の初心’の気持ちでより高みを意識しその者だけが持つ花を咲かせられる

ようしたいものである。////

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