風の行方

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help リーダーに追加 RSS 藤原 新也  「黄泉の犬」 〜後半

<<   作成日時 : 2008/05/13 23:59   >>

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<ピクセルのマンダラ>
チベットの僧が描くマンダラ。本来彩色された砂を使い、数週間かけて祈りながら、実に緻密で荘厳なごく彩色の曼荼羅が完成される。
そこに世界が生まれる。しかし、祈りが終ると速やかに壊される。
生命世界が破壊と生成のサイクルで成り立つように、世の無常と生々流転を唱いながら。

彼らがチベット展の催しで日本に招待され泊まったホテルでTVを見て「これはマンダラだ。」と言った。
’日本人はあんなに素晴しいいいマンダラを一部屋に一台も持っている’と驚き、日本人はチベット人のように信仰深い人々だと本気で言った。

イベントでは会期中ずっと砂でマンダラを作っており、完成され、破壊し、真にマンダラの完成を見るのだが、デパート側は、’もったいない’とアクリルで固め保存してしまった。愚かな。TVと言う優れたマンダラを所有しているのに。

砂は移ろい風紋を作り、又消え、何処かに姿を現す。一瞬の幻影(マーヤ)のように。そのマーヤである砂によってマンダラが描かれることに意味がある。極彩色の砂によって砂の楼閣が現れる。生命がそこに、世界がそこに立ち現れる。しかし速やかに消えてゆく。
この儀式は現実はマーヤであることを示す。この世はあの世。色即是空。

彼らが
TVをマンダラと言ったのは、藤原氏式解釈によると、TVの画像は電子(の砂)一画面に40万画素という細かい砂の数に等しい’ピクセル’という電子の光の粒が画像を築いている。何十年も微妙な砂でマンダラを築いては壊してきた彼らは画面に目を近づける。それが極彩色の砂の光で構成されていると気づく。彼らの持つ砂より完璧なもの。しかも見ることが出きても触れられない。

無数の電子の砂は時に光り、消え、色彩を変化し、寄り集まり、一瞬にして様々なこの世界のものを形作り一瞬にして消え去る。そして新たなマーヤのマンダラを作るという、生成と消滅の繰り返し。彼らの砂マンダラより一層空虚。それゆえ「彼方達は生まれた時からずっとこのマンダラを見て育っているなら20歳ぐらいにもう修行は出来ているはず。」と、口にしたのだろう。

////しかし実際その観念を知っている者がいるだろうか。いたとしてもTVを見る際、常にその様な事を頭に置いて見るだろうか。彼らが評価する日本人になるには、下記の藤原氏の見解を実行しないと辿れないだろう。////
世界と言うものがそれで成り立っていると実際の世界で学ぶこと。後は、地球が燃え尽きた所から始まるように、あらゆる存在や価値は予め燃え尽きた灰の上に咲く徒花に過ぎない。それゆえに世界はこよなく癒らかなのだ。

これは「ボルヘ・ルイス・ホルへス」の言葉に通じるものがある。

<月と灰>
印では人間の中に7つの意識が重層的に重なり合っていると語り継がれている。普段人間はその最も表層にある3つの意識、ムラナーダ(禁欲)、スワジナーダ(闘争心)、マンプラ(自分愛)の’熱の意識’で自分の深層心理を包み隠しているが、その熱を燃え尽きさせるか、他の意識に転化させることにより、本当の自分が立ち現れる。その本当の自分、つまり真我(プルシャ)に至る意識も、更に4段階に分かれる。
ある日の事、自分を襲おうとしていた大勢の犬に囲まれ、冬の冷たい川に足をつけ、小声と恐怖の中で何か軽い恍惚感のようなものを感じ、柔らかく包み込み始めた。ひと時ふっと安堵感が襲ってきた。これは心身極限の中、自分の意識が分裂し始めた。分裂は狂ったということではなく、表層の意識が剥がれて行く事。

自分が自分を覚めた目で眺め、目の前の風景、川、花、水、砂、木片、骨、足跡、犬。これらを包み込む空気。全てが空虚な砂の粒子により形作られている様なうつろな感じがした。そして自分自身であるように思えた。自分は犬であり骨であり、死者の感情?に近いのかもしれない。恐れる必要は無い。それで安堵感が襲ってきたのだろう。

印の火葬場__川の中州の島”遠くから見ると ニンゲンが燃えて出す光は 60W 3時間”
60年生きた人間も、死んで燃やすとせいぜい60W 3時間位光を放って消えてしまう。これは取るに足らないと言いたかった訳ではなく、広大な風景の中で確固として光り輝き、’捨てたもんじゃない’と思った。


http://www.fujiwarashinya.com

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